Background
Senseed:
感覚統合を、日常の遊びの中へ。
感覚統合とは、視覚・聴覚・触覚・前庭感覚・固有感覚など、身体に入ってくるさまざまな感覚情報を整理し、身体の反応へとつなげる働きである。幼少期の身体活動や感覚経験の積み重ねによって発達し、特に12歳頃までの成長過程において、多様な経験を重ねることが重要とされている。 現代社会で、生活様式や家族構成、都市環境、遊び方が変化する中で、子どもが日常の中で身体を動かし、多様な感覚に出会う機会も変わりつつある。SENSEEDは、こうした感覚経験を専門的な訓練としてではなく、親子の日常の遊びの中にどのようにつくることができるか、という問いから始まった。
Research & Analysis
感覚統合を知る
感覚統合とは、視覚・聴覚・触覚・前庭感覚・固有感覚など、身体に入ってくるさまざまな感覚情報を脳内で整理・統合し、周囲の状況に応じた身体の反応へとつなげる働きである。 私たちは、見る、聞く、触れるだけでなく、身体の傾きや動き、力の入り方などを絶えず感じ取りながら、自分の身体と周囲の環境との関係を把握している。こうした感覚の統合によって、姿勢や動きを調整したり、距離や高さ、速さなどを捉えて危険を察知したりすることができる。感覚統合は、身体を動かし、その結果として返ってくる感覚を受け取り、再び動きを調整するという経験の繰り返しによって発達していく。 特に12歳頃までの成長過程は重要な時期とされ、多様な身体活動と感覚経験を十分に重ねることが、その後の身体の使い方や環境への適応を支える基盤となる。
感覚を育む環境の変化
近年、子どもの「不器用さ」が目立つようになったと指摘されている。転びやすい、姿勢をうまく保てない、力加減が難しい、身体を思うように動かせないといった身体面だけでなく、集団行動への適応など、感覚統合との関わりが考えられる課題もみられる。一方、子どもを取り巻く生活環境も大きく変化している。都市化による活動空間や自然と触れ合う機会の減少、情報化による遊び方の変化、親子で過ごす時間の減少、少子化・核家族化による人との関わり方の変化など、日常の中で身体を動かし、多様な感覚を経験する機会にも変化が生じている。感覚統合の発達を考えるためには、子どもの「できる・できない」だけを見るのではなく、その背景にある、身体と感覚を育む環境そのものに目を向ける必要がある。
日常の遊びから学ぶ
子どもの日常の遊びに目を向けると、そこにはすでに多様な身体動作と感覚経験が含まれている。走る、回る、押す、引く、握る、叩くといった動きだけでなく、砂や水に触れる、ものを転がす、音や変化を確かめるなど、子どもは身の回りの環境や道具に働きかけながら、自ら遊び方を発見していく。観察を通して見えてきたのは、子どもは感覚を得ること自体を目的に身体を動かしているのではなく、「触ってみたい」「動かしてみたい」「どうなるか試したい」という好奇心によって自然に身体を動かしているということだった。そして、動きによって生まれた変化を感じ取り、もう一度試し、力や動かし方を変えながら遊びを発展させていく。この「遊びたい」という気持ちから生まれる自発的な身体動作に、感育の可能性があると考えた。
身体・道具・動作
遊びの中で生まれる身体動作を観察すると、動きは子どもの意思だけで決まるのではなく、道具の形や大きさ、重さ、素材、動かし方、さらにそこで起こる現象との関係によって変化していることがわかった。握る、押す、引く、回す、叩くといった動作も、道具から返ってくる重さや抵抗、振動、音、視覚的な変化を受け取ることで、力加減や速度、方向が自然に調整されていく。つまり、道具は単に身体動作を行うためのものではなく、動きを誘い、その結果を感覚として身体に返す媒介でもある。身体動作がどのように生まれるのかを考察し、「道具から生まれた身体動作」「習得型の身体動作」「無意識的な身体動作」の3つの視点から整理した。道具を使うとき、人はその形や大きさ、重さ、素材、抵抗などを身体で感じ取り、使いにくさや違和感があれば、持ち方や力加減を変え、ときには道具そのものを工夫する。新しい動作を身につけるときには、感覚を手がかりに試行・失敗・修正を繰り返し、やがて動きが身体に定着していく。また、音や光、揺れ、触感といった環境からの刺激に対して、意識する前に身体が反応することもある。こうした分析から、身体動作は身体だけで完結するものではなく、道具や環境から受け取る感覚と、そのフィードバックを通して絶えず調整されていることが見えてきた。この関係性をデザインすることが、自発的で多様な身体動作を引き出す手がかりになると考えた。
研究からデザインへ
感覚経験を増やすために特定の身体動作や感覚刺激を与えるのではなく、子ども自身が「やってみたい」と感じ、自然に身体を動かしたくなる状況をつくることに着目した。道具の形や素材、重さ、抵抗に加え、水や泡、音、描かれる軌跡など、動きによって変化する現象を遊びのきっかけとして取り入れる。子どもはその変化を確かめるために身体を動かし、そこから返ってくる感覚を受け取りながら、力加減や速度、動かし方を変え、何度も試していく。また、遊び方を一つに決めず、子ども自身が発見し、展開できる余地を残すことも重視した。こうして、感覚を「教える」のではなく、遊びたいという気持ちから身体と感覚の関係が自然に育つ道具のあり方を、SENSEEDのデザインとして展開した。















